後の祭り、祭りのあと



 声や物音を出してしまわないように、慎重になりながら二人の様子を窺う。
 どうせまた雄大が自慢をしてきて、結果を知ることになるのは目に見えている。だけどどうしてもこの場を去ることが出来なかった。

 結果を知るのは怖い。でも、雄大の口から結果を聞くまでずっと不安でいるのも嫌だ。

 だから、ねぇ。早く断って。
 そしてまたいつもみたいに、馬鹿みたいに自慢してよ。

 そうじゃないと、あたしは……。

 肩の動きで雄大がすっと息を吸ったのがわかった。その横顔は……嬉しそうに照れていた。


「俺は……」




 ――その言葉の先を、あたしは知らない。

 雄大の返事を聞く覚悟は出来ているつもりだったけど、あたしは直前になって逃げたんだ。
 だって、初めて見た。あんなふうに照れている表情。しかもそれを向けられていたのはあたしとは別の女子。

 それがすべて答えに繋がっているって考えたら、雄大の返事を聞くなんてこと出来なかった。だからあの場から逃げた。そのあとも雄大を誘うことなく、ずっと避けるようにして行動していた。

 だって雄大と出くわせば、また自慢をされるかもしれない。しかも今回は余計な報告つきで。

 そんなの、聞きたくない。
 そう思ってずっと避け続けたけれど、行き着く答えは一つだった。逃げ切れるわけがない。だってあたしは雄大と友達なんだから。

 どんなに今日は雄大から逃げることが出来たとしても、明日になればまた顔を合わす。今まで恋心を抱いてからも普通に接してきたのだから、急に雄大から離れるなんてことの方が明らかに不自然だ。

 でも、どうしよう……。

 ――そうやって、非常階段で思い悩んでいるときだった。雄大に声をかけられたのは。



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