後の祭り、祭りのあと



「美紗が好きなんだ。だから逃げんなよ。避けられるのは、つらい……」


 苦しそうに零した言葉。
 語尾に向かうにつれて雄大の視線と声が下がっていく。

 それでもまだあたしの頭は、渋滞しているみたいに情報を運びきれない。

 いや、待って。何なのいきなり。

 雄大があたしを、好き……?

 嘘だ。嬉しいけど信じられないし。だって今までずっと、そんな素振りなんて見せてくれなかった。むしろあたし、ときどき女に見られてないって思えることもあった。

 ……っていうか、告白されていた女子に嬉しそうに笑ってたじゃん。オッケーしたんじゃないの?

 そもそも何で、こんなタイミングで告白なんか……。
 しかも『だから』って何。好きだから逃げんなって、何その勝手な都合は。

 わかんない。わかんないよ。もしかしてあたし、からかわれてるのか……!


「何一人で百面相してんだよ」


 ははっと雄大が笑い、さっきまでの落ち込んだ様子が消える。コロコロと表情が変わるのは雄大も同じだ。人のこと言えない。


「ちょっ……、とりあえず顔から手離してよ。なんか、落ち着かない」

「ヤダ。美紗から返事聞くまでは離さない」


 首を振って顔を背けようとしたけれど無理だった。しっかりと両手で固定されてしまった顔は雄大に向けられたまま。

 さっきよりも心なしか距離が縮まっているような気がした。お互いの息がかかってしまいそうなほどの至近距離。

 ……いや、ちょっと。あんたいつからそんな強引なキャラになったのよ。

 ちょっと抜けているみたいに馬鹿な雄大が、今は真面目な顔をしてあたしを見ている。それだけでもなんだかクラクラするのに、強引に迫られるともうわけがわからなくなる。



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