後の祭り、祭りのあと
好きだと言われて、すぐにその胸に抱きつきたい衝動があった。
でも、本当は少しだけ怖い。
今まではずっと友達でいたからこそ保てていた関係。そこに特別な感情が入り込んだとしても、それは保っていられるのだろうか。
二人の想いを天秤に乗せたらどちらかが重すぎて、均等でいることが難しい気がする。
手を伸ばしたくせに、いざ触れそうになると怖気づいてる。そんな自分がいた。
そして何より、引っかかることがある……。
「……あの子のこと、好きなんじゃないの?」
「あの子?」
「とぼけないでよ。今日、告白されてたでしょう? その……隣のクラスの子に」
言葉にすれば簡単にあの時の光景が浮かぶ自分の頭を、心底恨んだ。
消えろと願っても焼きついたままのそれを振り払うように、瞼をギュッと痛いぐらいに閉じる。でも、消えないことはわかってる。
ちょっとだけ視線を右上に泳がせてから、雄大は再びあたしに視線を向けた。丸くなった瞳は驚いている証。
「あぁ、あの子か。……っていうかおまえ、何? もしかして覗いてたのか?」
「失礼ね。覗いてたわけじゃなくて、たまたま見ちゃったの」
いや、実際はそこに留まったのは本当のことだけどさ。でも見たくて見ていたわけじゃない。途中で逃げたわけだし。誰のせいでと聞かれたら、すぐに雄大のせいだと答えるけど。
ふーん、と。あたしの言葉を疑うような表情を向けられる。
今はそんなことどうでもいいでしょう。知りたいのは、あの子はどうしたのかってこと。
あんな表情を見せていたくせに、あたしに告白してくるなんて。こんなのあたしが、からかわれているとしか思えないじゃんか。