後の祭り、祭りのあと
「拗ねてんの? ヤキモチ?」
「なっ……! 違うし!」
むすっとした表情に目敏く気付かれてしまうのがつらい。そして素直にそうだと言えない自分が憎い。
雄大はそうやって翻弄されているあたしを面白そうに見て笑っている。そこでやっと、顔が手から解放された。ずっと掴まれていた頬に久しぶりに夜風が当たる。ぬくもりを失ったそこに触れる風はとても冷たくて違和感があった。
「おまえ、ほんっと素直じゃねぇな。可愛いげねぇよ」
「悪かったわね、可愛くなくて……」
でも、と。雄大の唇が動く。
その動きは一瞬なのに、そのあとに横に伸びた口角があまりにも綺麗で見とれてしまった。
「そういうとこも全部、好きだ」
あっ、と思ったときにはもう、目の前は真っ暗だった。腕を引かれて雄大のしっかりとした胸板に顔がぶつかる。
手加減なしに引っ張られたせいで、鼻をまともにぶつけてしまう。ムードも可愛げもない変な声がその拍子に出てしまった。
お揃いのオレンジ色のクラスTシャツ。そこに沁み込んだソースの匂いが、雄大の笑顔を思い出させる。独り占めしたい、あの笑顔。
「ゆ、雄大……?」
「おまえって、ほんと鈍感だよな。何で俺が今まで、いろんな子達からの告白断ってきたと思ってんだよ。全部、美紗が好きだからだっつーの」
背中に回された腕が優しく身体を包み込む。
その瞬間にドクンッ……と、一際速さを増して鼓動が鳴り出した。
おそるおそる雄大の胸に耳を当ててみる。するとわたしのそれと共鳴しているみたいに駆け足で動いているものがあることに気付いて、嬉しくなってわたしも雄大の背中に腕を回していた。