後の祭り、祭りのあと
気が付くと、フォークダンスの曲が終わっていた。ガヤガヤと生徒が騒がしくなり始める。
後夜祭が終わる。
その響きが嫌で、さっきまでは終わらなければ良いとさえ思っていた。だって祭りが終わった後には、何も残ってくれない気がしたから。
でも、今なら。
静かな余韻の中に希望が残るって信じられるよ。
グラウンドから校舎へ移動してくるざわめきに掻き消されないように、雄大の耳元に唇を寄せて言った。
「……あたしも、好き。雄大のこと、独り占めしたいぐらい」
頬が自然と緩んで微笑む。
顔を雄大の正面に戻すと、ニヤリと笑われた。そして腕を少し引かれて、今度は雄大の唇があたしの耳元に近付く。
「俺の方が独占欲強いから、覚悟しとけよ?」
ぞわぞわっと、全身に鳥肌が立っていく。体温が通常よりも2℃くらい上がってのぼせてしまいそうだった。
囁くようなその声に違う意味で後悔したっていうのは……内緒にしておこう。
あたしばかりが翻弄されるのはなんだか気に食わないしね。
だから代わりに「馬鹿みたい」と小声で呟いておく。これでも最大限の照れ隠しだ。
お互い顔を見合わせると、クスクスと笑った。
――祭りのあとに残ったのは、二人の通じ合った想い。
End.