後の祭り、祭りのあと
打ち上げ、か。
そういえば売り上げが目標金額を大幅に越えたとか何とか。みんなが騒いでいた気がする。
あたしと雄大のクラス。3年1組は昼間に開催された文化祭で、焼きそばの模擬店をやった。
キャベツともやしと豚肉が入ったソース焼きそば。
雄大は大きな鉄板の上で、大量の焼きそばを一気に焼いていた。
頭にタオルを巻いて、首からもタオルをかけて。熱い湯気に汗をかきながら、たくましい腕で麺と具材をソースに絡めている姿を見た。
その姿に見惚れながら、あたしは売り子をしていた。可愛く呼び込みなんて出来なくて苦労していると、雄大が湯気越しに笑っていたんだ。
その笑顔を独り占めしたかったけど、周りの女子生徒も一般客の女性も見ていて、無性にムカムカした。
お客さんを引き寄せている香ばしいソースの匂いが、恨めしく思えた。
隣に並んで、あたしと同じように手すりに肘を置いている雄大は、まだ頭にタオルを巻いている。
外すのが面倒だったのか。はたまたタオルを巻いていることさえ忘れているのか。
こいつなら、後者もあり得る。
「美紗、後夜祭行かねぇの? もう、始まったみたいだけど」
雄大が、グラウンドを指差す。と同時に、メガホンマイクのくぐもった声が響く。
あれが、後夜祭の始まりの合図。でも声は風に流されて、この高さにいるとよく聞こえない。
こんなんじゃ、下にいたってろくに声なんて届いてないだろうな。
でも下に集まっている人達は、マイクの指示に従ってぞろぞろと動き出す。なんだ、聞こえてるのか。