後の祭り、祭りのあと
「美紗? どうした?」
一瞬、心の内を読まれたのかと思った。
でも実際は雄大が心配そうにあたしの顔を覗き込んでいるだけで、そんな非現実的なことも道具も存在しない。
「……いや、別に。雄大が後夜祭に参加しないなら、がっかりしてる女子は多いだろうなぁって思っただけ」
あぁ、墓穴を掘ったなと思った。自分で傷口をえぐるようなことをしているあたしは、雄大のことを言えない。
1対1で接するときに不器用なのは、あたしも同じだから。
不器用なあたしは、話題を変えることも出来ない。勝手に動く口を、誰か止めてよ。
「後夜祭って、好きな人に近付けるチャンスじゃん。フォークダンスならペアにもなるし、雄大と踊りたいと思ってた子は多いんじゃない?」
学校行事のとき、特にこういうお祭りの行事のときとか。女子なんかみんな、違う意味でもお祭りモードだ。
あの人に、声かけてみよう。ううん、告白してみる。
いつものつまらない学校生活とは違う特別な環境と空気に盛り上がり、そしてそれに背中を押されて勇気づけられる子は多いはず。
気になる異性、好きな人に近付けるこれほどのチャンスはそうそうない。
自由な感じ満載の後夜祭の時間なんて、まさに最高の時間。
だからクラスメートも友達も、みんな背中に羽が生えたみたいな軽やかな足取りで後夜祭に参加しに行った。
果たしてどのくらいの想いが実るのかは定かではないけれど、それでもみんなの顔はキラキラと輝いていた。流れ星が落っこちてきたみたいに。
可愛いと思ったんだ。ああやって誰かを真っ直ぐに想い、それを素直に伝えようするみんなの姿が。
転がっているチャンスさえ手に入れようとしないあたしとは大違いだ。
……もう、きっと、手遅れだろうけど。