後の祭り、祭りのあと



「……俺と踊りたいと思う子なんて、いないだろ。こんな、ダンス下手なやつ」


 雄大は犬歯をニッと剥き出しにて、自嘲気味に笑った。

 たぶんここは「そうだね」って笑って返してやるべきだったのだろうけど、喉が締め付けられたみたいに声が出なかった。

 わかってない。雄大は何もわかってない。

 今日どれだけの人が、あんたの勇姿に見惚れていたと思ってるの。
 どれだけの女子があんたと一瞬に踊りたいって、誘おうよって囁きあってたと思ってるの。

 あたしがそれに、何度モヤモヤしてたと思ってるの。

 あたしは、雄大と踊りたいと思ってた。思ってたけど、誘えなかった。

 何で、どうして。
 傍にいるのに、こんなに遠いの。



『では今から、フォークダンスを始めます! 輪になってくださーい!』


 キーン、というマイクの小気味の悪い音と共に、案内の声が下で飛び交う。

 キャンプファイヤーの周りに、大きな輪が出来ていく。
 男女が別れて、二重の輪っかに。でも人数が合わなくて、結局はある程度混合されていく。

 クラスメートの男子が女子の輪に移されて、「俺だって女子と踊りたい!」って騒いでいた。
 笑いと冷やかしの声が大きくなる。


「美紗、ダンス踊りたい?」

「えっ?」


 いきなり、何を言ってるんだ……。

 そう思うわりに、ちょっと期待をしている胸が静かに動きを速めていく。

 手すりから身体を離して雄大に向き合うと、雄大が目を細めて笑っていた。でも、声は少し真剣。



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