ゆず図書館。*短編集*
「ひっ、比呂さん……っ?」
「こうやっていつも俺の中に閉じ込めておきたい。明里を他の男に触らせたくないし、見せたくない。……余裕なんて、これっぽっちもない」
「!!」
初めて聞く、簡単には信じることのできないような比呂さんの言葉に私の身体はビクッと反応してしまう。
またからかわれてるのかも、と頭をよぎったけど……
聞いたこともないような比呂さんの切ない声色に、これはきっとからかわれているわけじゃない、と思った。
だから、私はその言葉を素直に受け止めようと、比呂さんの腕をきゅっと掴む。
「……私には比呂さんだけです。比呂さんだけがいれば、それでいいんです」
「……明里」
本音とはいえ、襲ってきた恥ずかしさに私は比呂さんの腕に顔を埋める。
その時、私を抱き締めていた比呂さんの腕の力が緩み、私の身体がくるりと回転した。
私と比呂さんとのおでこがこつんとぶつかる。
「!」
「……嬉しい。明里が何を考えてるかわかりやすいとは言っても、改めて言われると嬉しいもんだな」
比呂さんの唇に嬉しそうな笑みが浮かぶ。
思ってることがわかりやすいだなんて、また子ども扱いされてる、と思ったけど……私はそれ以上に嬉しかった。
比呂さんが滅多に見せてくれない心の中を見せてくれて。