ゆず図書館。*短編集*
「あ、そうだ。三瀬(みつせ)」
「なにー? 喜多村さんがカッコいいことに、やっと気付いた? 崎本ってば、おっくれてるぅ~」
人差し指を上下に揺らしながら崎本のことを指差すと、うざそうに崎本の手が私の手を払いのけた。
「何だよそれ。アホか。そんな下らねぇことはどうでもいいんだけど」
「はぁっ!? 下らないとか言わないでよ!」
「下らねぇだろ。つーか、いいんだ? コレ。」
崎本がスーツの内ポケットから、青い封筒をぴらりと出す。
私はその青い封筒の中身の正体にすぐ気付き、一瞬にして釘付けになった。
「うそっ、チケット来たの!?」
崎本はぴらぴらとそれを左右に振りながら、にやりと楽しそうな笑みを浮かべる。
「昨日家に帰ったら来てた。いつ三瀬と会うかわかんなかったし開けたんだけどさ~、席、どこだったと思う?」
「えっ、どこどこどこ!?」
「くくっ、どこでしょー?」
ニヤニヤと笑って教えてくれない崎本にいらっとして、私はテーブルをバンバン!と叩いて急かす。
「ちょっと! もったいぶらないで教えてよ~!」
「あー、はいはい。……なんと、1列目! すごくね!?」
「うそぉ!? ほんとに!? ゴールドチケットじゃん! 見せて! 早く見せて!」
私は封筒を掴んでいる崎本の手に、テーブル越しに身を乗り出して飛び掛かる。
その中身を早く見たい!