ゆず図書館。*短編集*
「あっ、馬鹿! 落ち着けよ! あぶねぇだろうが! グラス倒れるっつーの!」
「やだー! 早く見せてよ! 私がどれだけ楽しみにしてたか知ってるでしょ!?」
「あーもう、わかったから落ち着けよ! ほら! ちゃんと見せてやるから!」
「わぁい! どれどれ~」
私は差し出された崎本の手から封筒を奪い取り、その中からするりと厚目の紙……私が何ヶ月も前から楽しみにしていたライブのチケットを取り出した。
そこに書いてあるのは“colorful”の文字、場所の名前、そして、約2週間後のクリスマスイブを示す日付。
“colorful”というのは私と崎本をガッチリと繋いでくれる存在である、7人組の男女混合の音楽バンドアーティストだ。
演奏する姿も奏でる音楽も、すべてがたまらなくカッコ良くて、“colorful”を初めて見た時から私はあっという間にハマり込んでいた。
そして入社してすぐの同期会でたまたま隣に座っていた崎本と“colorful”の話題で盛り上がったのが、私たちが仲良くなったきっかけ。
それからは何かあれば崎本とメールしたり電話したりもするようになって。
それまではひとりで行っていたライブに一緒に行くようになったのも、それからすぐのことだった。