ゆず図書館。*短編集*
その反面、部長は見た目はかなりカッコ良くて、まさにイケメンスーツ男子の典型だ。
だから、この性格を知らない他の部署の女子たちには部長のファンが多いのだと、同期の子たちによく聞く。
私もきっと、ここに配属されなければ、その子たちと同じだったのかもしれない。
幸か不幸か、この部署に配属されて部長の性格を知ったから、ファンになることはなかったんだけど。
私がよく思うのは、口の悪ささえ直せばもっとモテるだろうし、近寄ってくる人も多くなるのに、ってことだ。
部長はすごく勿体ない性格をしていると思う。
……ほんと、仕方のない人だ。
「おい!宮本っ、これ何だよ!?こっち来い!」
「っ!!」
突然呼ばれた自分の名前に、ビクッと身体が跳ねる。
パッと部長に目線を向けると、そこには私を睨み付ける顔があった。
げ。私、今日に限ってミスしてた?
イライラMaxの日にミスなんてツイてなさすぎる……。
ていうか、その顔、めっちゃ怖いんですけど。
私は渋々返事をした。
「はーい……」
「返事は短くていい!さっさと来い!」
「……はい。」
……あーもう、イライラをぶつけるのはやめて欲しい。
とは思っても、ミスをしたのは自分だから、反論出来るわけもなく。
はぁ、と息をついて、椅子から立ち上がる。
頑張れよ、という周りの視線に頷き、こっぴどく叱られるのを覚悟して、私は部長の元に向かった。