ゆず図書館。*短編集*
 

「はぁ。やっと吐き出せた」

「……え?」


力が抜けるように崎本が息をつく。


「ずっと気持ちを表に出すの、我慢してたから。あ、でも安心しろよ。今すぐ付き合えとか言わねぇから。ちゃんと三瀬が俺の方を向くまで待つ」

「……あの、私……」

「悪ぃけど、三瀬が喜多村さんのことを好きだっつっても、絶対、三瀬を俺の方に振り向かせるつもりだから。逃さねぇから覚悟しといて」

「……」


いつもみたいに口は悪くて強引なのに、くしゃりと私の頭を撫でてくる大きな手はすごくやさしくて、崎本の気持ちがすごく伝わってきて、私の心臓は爆発しそうなくらい跳ねている。

……崎本のことが好きだって、熱くなっていく全身が叫んでる。

今自分の気持ちを伝えなかったら、絶対に後悔する。

本当はずっと、崎本にもっと近付きたいと思ってた。

さっきのキスだけじゃ足りない。

その熱をもっとたくさん感じたい。

友達で十分だなんて、ただの綺麗事だったんだ。


「崎本……」

「あ?」


私は崎本の名前を呼び、私の横にあった崎本の腕を掴む。

そして、真っ直ぐ、崎本を見つめた。


「……私、喜多村さんに恋愛感情なんて全くない」

「は?」


……同期という関係を変えるために必要なもの。

それは、真っ直ぐと私に向かって崎本が伝えてくれた言葉。

そして……。


「……あのね、私もずっと前から、崎本のこと……」


あとは私の勇気だけ。





*36度9分*
 
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