君のためなら




――― パリ郊外



 緑が生い茂る大きな屋敷の庭で、一人木の幹に寄りかかって手紙を読む青年がいた。

心地よく吹く風が青年のミルクティー色の髪と持っている手紙を揺らす。


青年は両手で手紙が飛ばされないように持ち直し、最後の行まで丁寧に読むと、入れてあったであろう便箋にその手紙を戻した。
そして代わりに写真を取り出し、優しく微笑んだ。



「……これは偶然かな?」

青年は自分の膝で丸くなっている友人に、まるで独り言のように話しかけた。

友人は顔を青年に向け、首を傾げる。


それを見てまた笑うと、青年は友人の頭をなでた。




穏やかな午後だ。


横に置いてあった本に手紙をはさみ、静かにその本を読み始める。



青年と、青年を取り囲む周囲の景色がよく調和し合い、まるで美しい絵画の一点を見ているかのようだ。








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