桜雨〜散りゆく想い〜
 「香ちゃん、俺……」


 「待って――」


 香は抱きしめた僕の手にそっと自分の手を添えながら言った。


 「もう少しだけ待って……今はもう少しだけこのままで――まだノンちゃんと言葉を交わしていたいから……」


 言葉の意味がわからず、僕は尋ねようとしたが香がそれをさせてくれなかった。


 何も言わせない雰囲気。


 僕は諦めて抱きしめた腕に少し力を込めた。


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