桜雨〜散りゆく想い〜
 どのくらいそうしていたかわからない。きっと短い時間ではなかっただろう。


 長い長い沈黙を破ったのは茜だった。


 「ノンちゃん――」


 「何?」


 「私思うんだ、亡くなった人の思いを決めるのはきっと……」


 『残された人』


 僕は香に家族の事を話した覚えはない。もしかしたら誰かから聞いたのかもしれない。


 「天国も地獄も、未練も全部……残された人の為にあるんだよ――」


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