桜雨〜散りゆく想い〜
「ふふっ……可愛いね、宮田先生――」
「うんうん、そうなんだよな……」
顔を赤く染めたままの茜に視線を固定したまま、僕は隣の席に座る女の子に言葉を返した。
「ん……?」
言葉を返したはいいが、僕はおかしな事に気がついた。隣の席の女の子は新学期そうそうに転校して行って、空席になっていたはず――
ゆっくりと首を回して隣の席を見る。
窓際の席は、直に当たる暖かい春の陽射しが暑かったのかもしれない、開かれた窓から桜の花びらが舞い込んで来て、隣の席を見つめる僕の目の前をひらひらと落ちて行った。