桜雨〜散りゆく想い〜
 「それはこっちの台詞だよ、さっきのノンちゃん……この世の終わりみたいな顔してたよ?」


 「そんなに酷い顔してたかな?」


 「してたよ。こぉんな顔!」


 振り向いた香は、瞼を半分だけ下ろして少しだけ顔を俯けてみせた。


 「なるほど、それは酷い!」


 僕の腕は香の体を掴んだままだった。息がかかる程近くに香の綺麗な顔がある。


 ほんの少し爪先に体重をかけるだけで触れてしまう程の距離――


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