桜雨〜散りゆく想い〜
 目と目が合い、香はおどけた表情を消す。お互いが口にする言葉を無くし、静寂が訪れる。


 いつの間にか香の腕が僕の腰を回り、背中で手を結んでいた。


 自然と距離が縮まり、足元から順に身体が触れ合う。


 膝が当たり、腰が密着する。僕の胸の位置より僅かに低い所に、香の胸の感触がひろがる。


 ゆっくりと、でも確実に縮まって行く距離。


 数センチから数ミリ――


 鼻と鼻が触れ合う……


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