桜雨〜散りゆく想い〜
 昼休みになっても香は戻って来なかった。


 弁当を持って来ていない僕は、昼ご飯を食べずに屋上へ向かった。


 もしかしたらと思った香の姿は無く、降り続く雨が地面のコンクリートに当たり跳ねているだけだった。


 一歩踏み出した僕に容赦なく雨が吹きつける。


 すぐに髪はびしょ濡れになり、毛先に貯まっては雫となり落ちて行く。


 五月の雨はまだ少し冷たかったが、それが気持ち良く感じる。


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