桜雨〜散りゆく想い〜
 「佐倉さん――るの……」


 「は?」


 「――てるの……間違いなく」


 白木さんは、信じられないとゆう顔をしている僕に繰り返した。


 信じられるはずがなかった。


 自分の目が、手が、体が――全てが香を感じ、抱きしめたのだから。


 「は……はは――何言ってるんだよ、そんなわけないじゃん」


 僕がようやく捻り出した言葉は虚しく空中に浮かんで消えていった。


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