桜雨〜散りゆく想い〜
 桜並木で再会した時の香。


 雨に濡れた冷たい香の手。


 (そうかもしれない……)


 一瞬頭を過ぎる思いに愕然とする。


 「信じられないと思うけど……佐倉さんの住所、友達に聞いておいたから――」


 白木さんはまだ呆然としたままの僕にメモ帳の切れ端を差し出した。


 いかにも女の子らしい字で書かれた住所は、隣の県のものだった。


 「柏木君は知っておかなきゃいけない気がして――」


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