桜雨〜散りゆく想い〜
僕は抵抗を諦めて、ため息交じりに返事をした。
そんな僕の横で佐倉さんはクスクスと声を殺して笑っている。
綺麗な肌にポックリと浮かぶ笑窪が何故か恨めしい。
「じゃあ授業初めるよ!」
茜の声を合図にクラスの中がしんと静まり、教科書をめくる音だけが妙に響く。
僕も教科書を取り出して、パラパラとページをめくる。
ふと、視線を感じて隣を見ると佐倉さんと目が合った。視線の理由を尋ねようとして、それを口にする前に思い当たり、机を引きずってくっつける。
「教科書、だよね?」