桜雨〜散りゆく想い〜
 「僕に出来る事ならなんでも……」


 「ありがと……今だけ、少しの時間だけでいいから私だけを見て欲しい――」


 香は涙を止める事を諦めて、流れるままにして言った。


 頷いた僕はゆっくりと香に近づき、抱きしめた。


 柔らかい感触と、桜の香りが僕を包んで行く。


 凄く懐かしい香り――


 香が腕の中で頭を動かす度に髪が揺れ、香りが漂う。


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