桜雨〜散りゆく想い〜
 「あの日、桜雨の中でノンちゃんに恋をして――」


 一瞬、香の存在が希薄に感じて僕は腕に少し力を込めた。


 「こんなにも誰かを好きになって、思い続ける事が出来たんだもん……」


 「ありがとう――」


 「変なの……どうしてノンちゃんが御礼を言うの?」


 顔を上げた香の頬にはいつか見た笑窪がぽっくりと出来ている。


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