桜雨〜散りゆく想い〜
 「はい、ここが屋上」


 鉄製の扉を開けて出た屋上は、何処までも続いている青空と、何処までも吹きつける風に包まれていた。


 フワッ――


 音をつけるならそんな音だろう、柏木さんが僕の横を歩いて行く。


 そのまま端にあるフェンスまで行くと、金網に手をかけて言った。


 「私が桜を嫌いな理由――」


 柏木さんの後ろまで進んだ僕の目に桜並木のピンクが映りこんだ。


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