桜雨〜散りゆく想い〜
 「望……」


 今まで何回そう呼ばれただろう。


 少なくても、振り向かなくても誰かわかる程度には呼ばれた声。


 「茜……」


 涙で化粧が落ち、火傷の痕も夜目にもわかる。


 振り向いた僕に茜は叫ぶ様に言った。


 一度も見せた事のない必死な表情で――


 「塩味の卵焼き好きになってよ!!私も甘い卵焼き好きになるから!!」


 
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