桜雨〜散りゆく想い〜
授業の合間にある10分程の休憩だから、それを上回っている事はないが、とても長い時間に感じられた。
ただ髪を風に遊ばせて空を見つめる佐倉さんと、その佐倉さんを無言で見つめる僕。
言葉は何も交わされない。
だが、僕は何故か満たされた気分で、心地良さを感じていた。
ほんの10分にも満たない僅かな時間。一生のうちの10分など一瞬にも満たない刹那の時間、その刹那で僕は確かに満たされた。
「そろそろ戻ろっか」
現実離れした容姿の佐倉さんの言葉で僕は現実に引き戻され、頷いた。