桜雨〜散りゆく想い〜
 次の授業も当然教科書を持たない佐倉さん。僕は前の時間と同じように机と机の間に教科書を置いた。


 「ありがとう」


 微笑んだ顔はやっぱり反則だった。

 心臓が高性能のポンプになったかのように全身を勢いよく血液が回り、再び『触れたい』欲求が込み上げる。

 必死に拳を握る僕の手に、そっと何かが触れて頭の中に風が吹いた。


 「大丈夫?」


 佐倉さんの言葉が耳から入り、僕の頭の中に風が吹いた。

 ひらひらと桜の花びらを舞わせて――



< 21 / 202 >

この作品をシェア

pagetop