桜雨〜散りゆく想い〜
 何度見ても非の打ち所がない顔。


 (あれ……?)


 僕はその綺麗な横顔に見覚えがあった。


 (何処だったかな……?)

 今朝ではない、もっと前の事のような気がする。

 遠い遠い昔に過ぎ去った、大量の日々の中に埋没した一日――

 確かに見覚えはあるがいつ何処でかは、いくら考えても出て来なかった。


 「痛っ!!」


 「柏木!佐倉さんに見とれるのは休み時間だけにしろ!」


 佐倉さんの横顔を見つめたまま考え込んでいた僕は、数学担当の教師に頭を叩かれて顔を前に向けた。


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