桜雨〜散りゆく想い〜

 「さ、さあ……鼠にでも食べられたんじゃないですか?」


 既に僕と茜は鼻が当たりそうな程接近していた。27歳にしてはかなり幼い顔がそこにある。


 「あら、最近の鼠は弁当箱ごと食べるのかしら?」

 「ふ、不景気ですからね。鼠も贅沢言ってられませんよ」

 「そうね……それにしても私のお弁当によく似てるわね、そのお弁当」


 言いながらも茜の目は弁当を一切見ず、僕に固定されたままだ。


 「なんて言ったって宮田先生直伝ですから、似もしますよ」


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