桜雨〜散りゆく想い〜
 病院に運ばれて治療を終えた僕を待っていたのは絶望だった。

 両親は即死――

 唯一息のあった妹は意識不明の状態で、どう転んでもおかしくないと告げられた。

 僕は両親の死を悲しむよりも、妹の無事をただただ祈った。


 『お兄ちゃん』


 そう言いながら微笑む妹の顔が浮かんでは消えて行く。

 何百回目かの妹の微笑みが消えた翌朝、妹は静かに息をする事をやめた。

 驚く程あっさりと、僕は全てを失った。


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