桜雨〜散りゆく想い〜
 僕が席に着くと同時にドアが開いて茜が入ってくる。


 教壇に向かいながら何も言わずに僕を見て、優しく微笑み小さく頷いた。


 「みんなおはよう、ホームルームを始めましょう」


 恋ではなかったのかも知れない。


 ただ――


 僕が茜に惹かれたのは確かで……


 今思えば、やっぱり僕は子供で茜は大人だった。


 数日後、僕が茜に言ったのはそんな幼さから来た言葉だった。


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