桜雨〜散りゆく想い〜
 『ノンちゃん』


 幼稚園の頃に呼ばれていた名前だった。懐かしい呼び名を呼ぶ声には聞き覚えはなく、僕は首を傾げる。


 大分長くなって来た日も落ち始めている事に気付いて、僕は茜の家に向かい足を動かした。


 茜の家に着いた時、既に太陽はその頭を少し覗かせているだけだった。


 鍵を開けて部屋に入ると、当たり前だが朝僕が出て行った時のままの状態で、朝より少し薄暗くなっていた。


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