桜雨〜散りゆく想い〜
 茜は頬を膨らませて小さく頷く。その姿が愛らしく、僕は顔を綻ばせた。


 「ばぁか!何年前の話しだと思ってんの?」


 遠い遠い過去の話し――


 過ぎ去った日々に埋没した時の話し……


 今更再会したからと言ってどうなるわけもない。あの日からお互いが歩んだ道程は、交わる事無く続いて来たのだ。


 僕には茜がいる――


 何の不満もなく、幸せな日々を過ごしている。


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