桜雨〜散りゆく想い〜
 僕達が教室に着いて間もなく、予鈴がなり茜が入って来た。


 茜の顔を見て、何故か僕は昨夜の事を思い出した。


 僕の唇、手、体の動きに身を震わせて反応する茜。


 その全てが愛おしい――


 自分に暗示でもかけるように心の中で繰り返す。


 ただ認めたくなかった。佐倉さんが初恋の相手だとわかっただけで揺れる想い。


 自分の茜に対する気持ちは、そんなに安いものじゃないと思いたかった。


 「柏木君、朝からぼーっとしないの!」


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