僕ヲ愛シテ

連行

マンションを出てからしばらく歩いた。

「どこ行こう…渋沢区や八本木だと見つかっちゃうなあ…七王子とか?あ…いっそ茨騎とか縦浜?」

でもあてもお金もない。


「勢いで出てきちゃったから、ケータイも財布もないもんなあ。どうしよう…」


僕は、後ろから近づいて来る気配に、気づく事が出来なかった。


「…っ!ふ、んぐっ…」

いきなり後ろから羽交い締めにされ、ハンカチを口に当てられる。

遠のく意識の中聞こえた声と、霞んでいく視界に微かに映った顔。


「まったく。手を煩わせないでもらえるか?」


それはこの世で一番信じていた、親友だった。
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