掌編小説集

312.見えないものにこそ価値がある

生きる意味を失っていた


いや、

生きる意味が分からなかった



ただ、

たった一人の家族の為に働いた


たった一人の家族が見せる
生きる希望に満ち溢れた笑顔



だけど、



白い部屋に
たった一人の家族はもういない



ああ、

生きる意味はあったんだ



白い部屋の中に

その中にいたたった一人の家族に





ただ、

気付かなかっただけ



ただ、


気付こうとしなかっただけ




感じようとしなかった幸せと

手に入れていた満たされた日々



もう二度と掴むことは出来ない
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