掌編小説集

*333.貴女達のおかげで産まれてきて良かったと思えるようになったんだ

父親も母親も母親の弟も


泣き叫んだって

手を伸ばしたって


こちらを見ようとしなかったのに


母親の弟の奥さんだけは


私の姪だと

私の家族だと


私を見てくれた


血の繋がりなんて全く無いのに



だから、医者の同僚で親友が叔母さんを助けられなくても


叔父さんが命懸けで産まれた我が子に会いに来なくても



私は笑うんだ


叔母さんが言ったから

他愛ない日常会話だとしても

好きだと言ったから



叔父さんが再婚して

その奥さんが運び込まれたのは運命の悪戯か



我が子が居なくなって厄介払い出来たと言いたそうな顔をした


主治医を代えてくれと言った


そんな叔父さんでも


私は許そう



再婚相手の奥さんが言ったから



私の姪に当たる人でしょ


私の家族なんでしょ


代わる必要なんて無いと言ったから



だから私は全てを許すんだ


幾年分の涙を流しながら


忘れかけてた本当の笑顔で



そして言いたいんだ



貴女に

生きていてくれてありがとうと


貴女の赤ちゃんに

産まれてきてくれてありがとうと



その手伝いが出来て本当に良かったと
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