掌編小説集

369.目に見えないものこそ

題、「命」





それは私の作品



世界中から注目を集める作品展の一角



有名も無名も関係ない、飾られた絵達。







だけど、そこに私の「絵」は無く。




かける為のフックと題名のみで壁は丸見え。






しかし、絵は出来ていた。




今までで最高傑作と呼べるものが。



だが、もう無い。





子供達の不注意で燃えてしまった。



アトリエごと。






泣き謝る子供達を私は抱き締めた。






怪我が無くて、誰も被害に遭わなくて良かったと。




だって、私の絵は、絵のモデルは、



都会から遠く離れた、


生まれ育った小さな小さな村とあたたかい村民だから。





私が命を吹き込んだ絵が守ってくれた。






だから、「この」作品は私の最高傑作に変わりない。
< 369 / 664 >

この作品をシェア

pagetop