掌編小説集

394.癒し空間に増えた心地好さ

会ってしまった。




仲の悪い(と勝手に思われていると私は思っている)上司が、バーのカウンターに居たからだ。




馴染みの席でないと落ち着かないので、仕方がないから上司の隣へ座り。



いつものと頼んだものは、隣にもあったものだと頼んでから気付く。




だが、プライベートだ。



気にせず、だが一応一言断りを入れて、癒しの読書に浸る。




しかし何故か上司が覗き込んでくる。



嫌っているくせに何だと思いつつ。



読まないで下さい。



と言えば、何故だか気まずそうに悲しそうに視線を逸らす。




意味が分からないが、こちらが悪いみたいな空気なので、とりあえず弁解の意を込めて。



これは下巻ですから。




と昼休みに読み終わった上巻を差し出したら。



何故だか、嬉しそうに受け取った。






何だ、嫌われているんじゃないのか?



ヤメテクレ。



キタイシテシマウカラ。
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