掌編小説集

448.情けは人の為ならず

取引があると警戒していたのだけれど。






逮捕の為と正論を振りかざしスタンドプレーを続ける捜査員の一人と、現れた犯人が揉み合いになってしまった。






大立ち回りを続けるうちに、逃げ遅れた子供が巻き込まれて、長いエスカレーターに追い詰められ落ちそうになって。





そんな子供を救おうと手を伸ばしたら、踏み留まれずに一緒に転げ落ちてしまった。







頭を打って、意識不明の重体で、更には記憶喪失になって。






けれど、逮捕できたから。






違法捜査だったとしても、思いは同じだと思うから私は責めない。




怪我したのが私で良かった、子供が怪我しなくて良かった。



なんて。


迷惑かけている私が言えた義理ではありませんけど。
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