掌編小説集

520.貴方から貰ったこの指輪を私の指にはめるのは貴方がいい、貴方でなければならないの

出逢ったのは偶然じゃなくて必然ね

ぶつかって怒鳴られて謝って

手から離れてしまった白杖を

手探りで探していたら

車に乗り込む寸前だった貴方が

何の気紛れか近付いてきて

手渡してくれた

方向が分からなくなってしまった

私の行き先を聞いた貴方は

知り合いだからと言って

行き先と話をつけて

貴方のところで働くようになった

貴方は玄の旦那と呼ばれて

界隈では有名みたいだけれど

私にはとっても優しいね

貴方は父親と折り合いが悪くて

私の親戚がいる警察が嫌いだから

話題にはしないけれど

いつか言えたらいいな

私には甘い貴方が

あの匂いを

あの人が冷たくなった原因の

あの匂いを纏わせて

帰って来た時から

親戚から同僚が怪我をしたと聞いた時から

あの時のような嫌な予感がしたの

けれど

きっと親戚と仲間が貴方に辿り着くから

だから私は

あの人の命日に花を添えて

プロポーズされたのよ

と嬉しい報告をしたの

貴方が父親を許せなくても

親戚と仲間が貴方を許せなくても

貴方が許せない罪を犯しても

あの人は憎まないから

あの人は誇りを大切にするから

私は許すわ

私は貴方を待つわ

私は信じるわ

私を助けてくれた貴方が

悪い人だなんて思えないから
< 520 / 664 >

この作品をシェア

pagetop