掌編小説集

528.天泣の落書きにネモフィラの祝福を

メソメソして下を向いている暇があったら

大事なものを見逃さまいとして

睨み付けてまで

存在を認めて欲しいからと

至るところに落書きするのはいいけれど

もっと上手く書いてよ

あんたなら書けるからさ

なんて仏頂面を見て苦笑いしながら

喧騒を遠くに聞きながら消すのを手伝って

そんな夢物語を言って早数十年

良く晴れた爽やかな風が吹く今日は

あんたとあんたの愛する人との晴れ舞台

最後になって

畏まって頭を下げて

あんたからありがとうなんて

お礼を言われるだなんて

思ってもみなかった

けれど

ご招待した人達を見れば一目瞭然

面白そうだなと書くのを加勢したり

しょうがないと消すのを手伝ったり

早くしろよと待っていてくれたり

今ならきっと騒がしいくらいよ

あんたが築き上げてきたもんなんだから

文句の一つだってありゃしない

野暮なことは言わないから

あんたが描いた落書きという名の絆に

上手に書けたじゃないと

頭を撫でながら一言だけ添えたの
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