掌編小説集
535.無限の布袋石は舞還のコラージュとなりし、霧弦となれりプシュケーと鬱金香は夢幻となりぬ
両親とは死別してしまったけれど
愛されて祝福されて産まれてきた
煌煌たる影が照らし出した
最強と謳われる里一番の強大な力
濃い陰を理不尽に強調され
その力には到底耐えられない身体
不整合が造り出し与えた宿星
育ての親が力に耐えられるように
暗躍すらして研究していたけれど
甘すぎる毒薬を求める代わりに
相応の代償を支払うかのように
ひりつく危機が訪れても翻弄されるだけ
一つずつ大切に繋いできたピースでさえ
徐々に崩され着実に壊れて
どんどん散り散りになって
あっさり失われて残骸すら見当たらない
血の気が引いた憂き目に冥福を祈るだけ
変えられぬ特質で忌み嫌われてしまっても
陰口を罵って饒舌に浴びせていたその口で
掌を返したように平気で哀れみも口にして
吐き出されてしまっては戻ってもくれずに
無意識に湧き起こる同調という安定を望む
それでも育ての親以外の里の人々に
責任があった訳でも悪かった訳でも
誰に対しても恨みなんて無い
何に対してもあるわけがない
何故かと訳柄を問われ呼応するならば
穏便で無責任な事なかれ主義ではなく
動乱の渦中で抛擲させられた一族の
畏怖の念と威厳を知らしめるという
意見が対立しぶつかり合う喧嘩でも
守りたいが故の戦争なんかでもない
己の目的を果たしさえすればいいと
身の程を弁えずにただ虐殺を極める
福に服を着せる様に崇高な理想を掲げ
革命という名の復讐を起こした奴から
取り越し苦労が多い上に誰かが
傷付いたり悲しんだりする事を
自分のことのように思える彼と
杳々たる間者に自らなった彼と
何も出来ないくせに
腑甲斐無いくせにと
投げ出すのではなく
せめて出来ることを
幾許に足手纏いでも
切り札として里を守る為に誓約と束縛を交わした
忍従して全てを手放し捨てて
慎重に里を守るはずの行動が
真っ直ぐ動けず置き場を探し
苦しめている矛盾だらけの
現状に気付いてしまっても
それでいいんだとは
言い切れぬ行為でも
時の流れから弾き出され
変わることすら出来ずに
在るべき世界へ還る時を
一矢報いる瞬間に賭ける
私が居ないと奴を討ち取れるだけの力が存在しなくなるから
私が居なくなれば育ての親は悲しむことが分かっているから
悩む意味がないと知ったところで
悩みを忘れられる程目出度くない
そうするしかないからそうするだけ
この力なんて必要とされない世界へ
恙無く行き着く為に彼とどこまでも
幕開けはいつ倒されていたのだろうか
極限状態で並べられたドミノに
亀裂が現れ均衡が一瞬で崩れた
恐らく最初から傾いていたに違いない
渾身の力を振り絞り
バランスを維持させ
どうにか踏み止まる
僅少な防御をすり抜けて
届いてしまわないように
世界を否定し弱者を甚振り
破壊の限りを尽くせるのは
得難い世界だと気付かずに
里の為にしか生きられないなんてなと
感情の動きに合わせ表情を変化させて
憎悪を滾らせながら嘲笑い哀れんでる
奴と共に彼の亡骸と力ごと消し去った
命を投げ出し守ってもらって
私だけが生き長らえてしまう
覚めない悪夢はもう終わった
静寂の中で罪の意識に無言で押し潰され
居場所を見失った自分さえ自らで拒んで
心の底から自分を憎み自らの死を願う時
他でもない自分の気持ちに自ら嘘を付き
万物の霊長として既に死せる屍としても
世界を繋ぎ止められたのだろうか
忘れてしまいそうになる程平然と
崩壊と構築の二律背反を繰り返し
訪れた蜜月時代の最中に魅入られた
笑って笑いかけて笑い合う白昼夢は
いかに敢闘しても現実にはなれない
鍵など無くとも過ぎ来し方が施錠して
自らの手で終止符を打つことを選んだ
私は私の為に生きれないけれど
私は私の幸せを願えないけれど
私は里に縛られているんじゃない
私が里を縛り付けてしまっただけ
里に守られていた私の命は
既に私自身のモノじゃない
死ぬことすら満足に出来なかったけど
迚も斯くても里を守る為に生きられる
願っていいなら
里の為に死ねるなら
誰かが救われるなら
私が救えるなら
里を救えるなら
名前なんて残らなくていい
存在だって忘れられていい
誰にだって気付かなくていい
誰にも気付かれてはいけない
肩代わりしてもらえない孤独な恐怖を
自ら心に刻み付けてしまったとしても
平和な顕世の談笑の裏側で
袖にされる人がいるのなら
それは私でいい
私が最初から存在しなかったかのように
ずっと変わらずに笑っていてくれるなら
大切な人達が幸せでいられる世界が
後生大事に続いていってくれるなら
それで私は良い
故意で悪意的な辯解の代償は
偶然で好意的な懺悔の対価は
身に余る光栄に他ならない。
愛されて祝福されて産まれてきた
煌煌たる影が照らし出した
最強と謳われる里一番の強大な力
濃い陰を理不尽に強調され
その力には到底耐えられない身体
不整合が造り出し与えた宿星
育ての親が力に耐えられるように
暗躍すらして研究していたけれど
甘すぎる毒薬を求める代わりに
相応の代償を支払うかのように
ひりつく危機が訪れても翻弄されるだけ
一つずつ大切に繋いできたピースでさえ
徐々に崩され着実に壊れて
どんどん散り散りになって
あっさり失われて残骸すら見当たらない
血の気が引いた憂き目に冥福を祈るだけ
変えられぬ特質で忌み嫌われてしまっても
陰口を罵って饒舌に浴びせていたその口で
掌を返したように平気で哀れみも口にして
吐き出されてしまっては戻ってもくれずに
無意識に湧き起こる同調という安定を望む
それでも育ての親以外の里の人々に
責任があった訳でも悪かった訳でも
誰に対しても恨みなんて無い
何に対してもあるわけがない
何故かと訳柄を問われ呼応するならば
穏便で無責任な事なかれ主義ではなく
動乱の渦中で抛擲させられた一族の
畏怖の念と威厳を知らしめるという
意見が対立しぶつかり合う喧嘩でも
守りたいが故の戦争なんかでもない
己の目的を果たしさえすればいいと
身の程を弁えずにただ虐殺を極める
福に服を着せる様に崇高な理想を掲げ
革命という名の復讐を起こした奴から
取り越し苦労が多い上に誰かが
傷付いたり悲しんだりする事を
自分のことのように思える彼と
杳々たる間者に自らなった彼と
何も出来ないくせに
腑甲斐無いくせにと
投げ出すのではなく
せめて出来ることを
幾許に足手纏いでも
切り札として里を守る為に誓約と束縛を交わした
忍従して全てを手放し捨てて
慎重に里を守るはずの行動が
真っ直ぐ動けず置き場を探し
苦しめている矛盾だらけの
現状に気付いてしまっても
それでいいんだとは
言い切れぬ行為でも
時の流れから弾き出され
変わることすら出来ずに
在るべき世界へ還る時を
一矢報いる瞬間に賭ける
私が居ないと奴を討ち取れるだけの力が存在しなくなるから
私が居なくなれば育ての親は悲しむことが分かっているから
悩む意味がないと知ったところで
悩みを忘れられる程目出度くない
そうするしかないからそうするだけ
この力なんて必要とされない世界へ
恙無く行き着く為に彼とどこまでも
幕開けはいつ倒されていたのだろうか
極限状態で並べられたドミノに
亀裂が現れ均衡が一瞬で崩れた
恐らく最初から傾いていたに違いない
渾身の力を振り絞り
バランスを維持させ
どうにか踏み止まる
僅少な防御をすり抜けて
届いてしまわないように
世界を否定し弱者を甚振り
破壊の限りを尽くせるのは
得難い世界だと気付かずに
里の為にしか生きられないなんてなと
感情の動きに合わせ表情を変化させて
憎悪を滾らせながら嘲笑い哀れんでる
奴と共に彼の亡骸と力ごと消し去った
命を投げ出し守ってもらって
私だけが生き長らえてしまう
覚めない悪夢はもう終わった
静寂の中で罪の意識に無言で押し潰され
居場所を見失った自分さえ自らで拒んで
心の底から自分を憎み自らの死を願う時
他でもない自分の気持ちに自ら嘘を付き
万物の霊長として既に死せる屍としても
世界を繋ぎ止められたのだろうか
忘れてしまいそうになる程平然と
崩壊と構築の二律背反を繰り返し
訪れた蜜月時代の最中に魅入られた
笑って笑いかけて笑い合う白昼夢は
いかに敢闘しても現実にはなれない
鍵など無くとも過ぎ来し方が施錠して
自らの手で終止符を打つことを選んだ
私は私の為に生きれないけれど
私は私の幸せを願えないけれど
私は里に縛られているんじゃない
私が里を縛り付けてしまっただけ
里に守られていた私の命は
既に私自身のモノじゃない
死ぬことすら満足に出来なかったけど
迚も斯くても里を守る為に生きられる
願っていいなら
里の為に死ねるなら
誰かが救われるなら
私が救えるなら
里を救えるなら
名前なんて残らなくていい
存在だって忘れられていい
誰にだって気付かなくていい
誰にも気付かれてはいけない
肩代わりしてもらえない孤独な恐怖を
自ら心に刻み付けてしまったとしても
平和な顕世の談笑の裏側で
袖にされる人がいるのなら
それは私でいい
私が最初から存在しなかったかのように
ずっと変わらずに笑っていてくれるなら
大切な人達が幸せでいられる世界が
後生大事に続いていってくれるなら
それで私は良い
故意で悪意的な辯解の代償は
偶然で好意的な懺悔の対価は
身に余る光栄に他ならない。