掌編小説集
536.荒唐無稽な意趣返しよ、以後よしなに。
上げられた口角に不快を感じることは無く
嬉しさ云々も感じることは無く只々不可解
軽薄な優男が形作るアイシテイル
慕情を吐くその唇に口付けをした
キスが欲しいならキスをします
キスをしたいならしてください
抱き締めたいならしてください
貴方がお望みならばその先だって構いません
合意の上ですから勿論何の問題もありません
そんなことで私の心を壊した貴方の
私に近付く人達を排除する為だけの
咎の腰を折ることが出来るのならば
罪を償うことは義務ですが赦された権利でもありますし
瀟洒には程遠い私が行使可能な最善の忠告だと鑑みます
私が経験に基づく警告を述べただけなのに
理に敵わないことしか言わない現在の私は
貴方の手に入れたかった私ではないらしい
言わされているだけだろうと
頼むから違うと言ってくれと
錯綜した思考は地雷を踏んでしまって
他の言葉を忘れてしまったかのように
駄々っ子の様に有無を言わさぬ勢いで
優男の肩書が剥がれ未熟な精神を晒してまで都合の良い託種
心の動揺そのままに乱暴に詰め寄る貴方に抵抗する気はない
非論理的に否定だけを繰り返す貴方に不満を抱く訳でもない
悪意を根底に持ち傷付けながら得た過去は
確かに存在したことを永遠に証明する事実
出口が欠落した闇の中で沈んでいくように
臍を噬む報いだけが手元に舞い戻ってきた
艶やかなる脅威を映し出す鋭い凶器を手にすれば
世界に組み込まれたカードはいとも簡単に裏返る
何が起こっているかなんて至極単純で
それでも疑念を尋ねることで形にして
確かめなければ理解すら出来なかった
よもや見せ付けられたのは暴力に踊らされた痕跡
知らず知らずの内に妄想として膨らんで
歪んだレンズ越しにしか見れなくなって
降りかかる全てから守ってやればいいと
様々な悪行を気取られないよう秘密裏に
距離を置きながらも捕らえて纏わり付き
憧れの英雄気取りを望み悦に入っていた
貴方に微塵も変化が無いからこそ
私が却って際立ってしまっただけ
貴方がどんなに受け入れ難くても
戸籍上も姿形も相違無く私のまま
消えない傷を残すことを余儀なくされて
空っぽになった心は二度と満たされない
忿怒し責めることも
憎み復讐することも
謝罪を求めることも
貴方を愛することも
万に一つもないので
どうぞご安心下さい
もはや何かが始まる予兆も
終わる予感も感じさせない
素っ気なく袖を振り払うように
無欲で起伏の無い潮騒のように
瞳は瑕の無いガラス玉みたいに
澆薄で無機質な作り物みたいに
自然な違和感となって反射する
自らの幸福の為に最愛の人の幸福を破壊し
得たかった役を手に入れて
知りたかったことを知って
したいと思ったことをして
自ら閉ざした未来は過去を総じて嫌悪する
貴方は私を愛していたからこそ
物理的な距離の隔たりではなく
心の領域が重なり合うことなく
私にとって貴方が瑣末であると
追い付いた理解が敗北と絶望に
縷縷と綾なされ止め処なく浸透
悪に身を窶し善に屈して頽れた
失敬失敬と秘密の暴露が飾り立てた
ベゼルの内側こそ悉皆寔に相応しい
嬉しさ云々も感じることは無く只々不可解
軽薄な優男が形作るアイシテイル
慕情を吐くその唇に口付けをした
キスが欲しいならキスをします
キスをしたいならしてください
抱き締めたいならしてください
貴方がお望みならばその先だって構いません
合意の上ですから勿論何の問題もありません
そんなことで私の心を壊した貴方の
私に近付く人達を排除する為だけの
咎の腰を折ることが出来るのならば
罪を償うことは義務ですが赦された権利でもありますし
瀟洒には程遠い私が行使可能な最善の忠告だと鑑みます
私が経験に基づく警告を述べただけなのに
理に敵わないことしか言わない現在の私は
貴方の手に入れたかった私ではないらしい
言わされているだけだろうと
頼むから違うと言ってくれと
錯綜した思考は地雷を踏んでしまって
他の言葉を忘れてしまったかのように
駄々っ子の様に有無を言わさぬ勢いで
優男の肩書が剥がれ未熟な精神を晒してまで都合の良い託種
心の動揺そのままに乱暴に詰め寄る貴方に抵抗する気はない
非論理的に否定だけを繰り返す貴方に不満を抱く訳でもない
悪意を根底に持ち傷付けながら得た過去は
確かに存在したことを永遠に証明する事実
出口が欠落した闇の中で沈んでいくように
臍を噬む報いだけが手元に舞い戻ってきた
艶やかなる脅威を映し出す鋭い凶器を手にすれば
世界に組み込まれたカードはいとも簡単に裏返る
何が起こっているかなんて至極単純で
それでも疑念を尋ねることで形にして
確かめなければ理解すら出来なかった
よもや見せ付けられたのは暴力に踊らされた痕跡
知らず知らずの内に妄想として膨らんで
歪んだレンズ越しにしか見れなくなって
降りかかる全てから守ってやればいいと
様々な悪行を気取られないよう秘密裏に
距離を置きながらも捕らえて纏わり付き
憧れの英雄気取りを望み悦に入っていた
貴方に微塵も変化が無いからこそ
私が却って際立ってしまっただけ
貴方がどんなに受け入れ難くても
戸籍上も姿形も相違無く私のまま
消えない傷を残すことを余儀なくされて
空っぽになった心は二度と満たされない
忿怒し責めることも
憎み復讐することも
謝罪を求めることも
貴方を愛することも
万に一つもないので
どうぞご安心下さい
もはや何かが始まる予兆も
終わる予感も感じさせない
素っ気なく袖を振り払うように
無欲で起伏の無い潮騒のように
瞳は瑕の無いガラス玉みたいに
澆薄で無機質な作り物みたいに
自然な違和感となって反射する
自らの幸福の為に最愛の人の幸福を破壊し
得たかった役を手に入れて
知りたかったことを知って
したいと思ったことをして
自ら閉ざした未来は過去を総じて嫌悪する
貴方は私を愛していたからこそ
物理的な距離の隔たりではなく
心の領域が重なり合うことなく
私にとって貴方が瑣末であると
追い付いた理解が敗北と絶望に
縷縷と綾なされ止め処なく浸透
悪に身を窶し善に屈して頽れた
失敬失敬と秘密の暴露が飾り立てた
ベゼルの内側こそ悉皆寔に相応しい