掌編小説集

537.宛らアルティメットエスポワールでよろしおすなぁ

期待を抱かれる重み
壊してはいけない責任
背負わされる未来
望まぬまま見送るだけ
置いてきぼりの自分

観覧車に乗せられた観覧者




選ぶことの出来なかった可能性の先の未来を
恨み辛みの果ての悲しくも優しい世界を
すべて差し出してでも見て欲しいから


後は頼んだなんて一言
すべての思いが込められた短い決意を
受け止めてもらえるなんて思っていて

勝手なことばっかり




なんで私だけ生かされているの?
なんで連れて逝ってくれないの?

幸せになれなんて呪いの言葉




浜辺に描いた絵のように不安の波にさらわれ
やるせなささえ言えなかったのは
言ったところで状況が変わらないことは明明白白
どうせ分かってはくれないと早合点した訳じゃない


在り続けることだけを望まれ
神と繋ぐ為に捧げられた贄は自分の命になど目もくれず

危機感を抱えながら問題を先送りし延々と結論を引き延ばし
償いを過去にした報いを受けながら

ひたすら帳尻合わせの為だけに
歯車はクローズしながら黒い渦となり回りながら蝕み軋む

サラウンドのノイズが音量を上げ続け
不愉快な音は心をかき回し続け

どうにも出来ないからこのままでもいいと思っただけ




何をするかの共通の理解を持っているのに
向かっているのか呼び寄せられているのか
誰一人知らない


他を守れば個も守れるけれど
個を守っても他は守れない

下手をすれば全滅もあり得るけれど
上手くすれば犠牲が出ないかもしれない


妥当性がありつつ避けれない鬼一口を
先ずは御手並み拝見とばかりに
遂行しなければならないのは
御相伴にあずかる程にそうするしかないから




過ごしたかけがえない時間と
これからの未来を犠牲にし
アンパイアさえ正確に把握出来ない
今という時はひたすら転がって
脇目を振らずに落下する

わざわざ苦しくなる選択をして
旅立ちの船出を見送ってまでも

誰にも見えない細い
切れてしまうような脆い
雁字搦めの硬い
磐石な運命に抗うことは

それだけの価値がある



良い方向に変えていくのか
悪い方向へ導いていくのか

善は急げだが急いては事を仕損じる


簡単には戻れないなら
進んでも追い付けないなら
止まることさえ出来ない私ごと
闇を閉じ込めて凍らせて




喰らった暗いCRYindestructible



烏滸がましい時分
与えられた役名は
救世主という名の
< 537 / 664 >

この作品をシェア

pagetop