掌編小説集
539.不器用な生真面目くんが恋をした
機械並みに頭の回転が早く
無口で冷静沈着の文武両道
しかし無愛想なのが玉に瑕
それが周りからの俺の評価
そんな俺が一生無縁なのだと思っていた
恋というものをこの度自覚してしまった
表情筋は一切動いていないが
内心はもの凄く戸惑っている
冗談さえストレートに受け止めてしまう俺が
調べるための辞書も正解を導き出すどころか
手本にするべきマニュアルの欠片すらない恋
どこから手をつけていいのか
皆目検討もついていないのだ
合わせられないのに無意識に追った視線を
気付かれた瞬間に意識して反らしてしまう
別人になってしまったかのような高鳴る鼓動
一生懸命抑えようとすればするほど意識して
余裕が無くなり空回りしてぎこちなくなって
完膚無きまでの不器用さに拍車が掛かっても
きっと喜んでもらえるとか思い込んで突っ走って
ありがた迷惑へとねじ曲がってしまわないように
些末なことで不興を買ってしまったり
まして忌諱に触れるようなことだけは
絶対に避けなければならないし
細心気を付けなければならない
他の誰でもなく俺が責任をもって
行動しなければならないのだから
大丈夫大丈夫
俺なら出来る
恐らく出来る
多分とは怯懦
声を出すことで成功のイメージを刷り込ませよう
初めての気持ちで最初から上手くは出来ないから
どんなに弱気な発言であっても自信満々に力強く
震える声を聞き逃さないよう心内に耳を近付ける
度胸が無く威勢を張っているだけだったとしても
思いっきりやってみないと失敗かどうかも不明で
自分自身で否定してしまえば萎縮してしまうから
全然全くもって大したものじゃないけれど
などと前置きして喜んだ顔を見たいが為に
会話を盗み聞きなんて無様な真似までして
振り向かせようとしているのだろうか
好みだというものを見付けては贈り物
立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花
コロコロ変わる表情は新しい本を読むように
まだ知りえない世界の示す片鱗に触れられる
然りとて俺が変わる為の材料ではない
新たな想いや感情を生み出し
満ち溢れる愛おしさに対して
全力で向き合っていきたいと
思えてしまう必要不可欠な人
積極的に掴み取れ無くても
消極的で後悔を残すのなら
エトセトラ割りきれずとも
パンジーに降り注ぐ春時雨
難解の怪なら何回でも解を
偏に明かし続けてみせよう
無口で冷静沈着の文武両道
しかし無愛想なのが玉に瑕
それが周りからの俺の評価
そんな俺が一生無縁なのだと思っていた
恋というものをこの度自覚してしまった
表情筋は一切動いていないが
内心はもの凄く戸惑っている
冗談さえストレートに受け止めてしまう俺が
調べるための辞書も正解を導き出すどころか
手本にするべきマニュアルの欠片すらない恋
どこから手をつけていいのか
皆目検討もついていないのだ
合わせられないのに無意識に追った視線を
気付かれた瞬間に意識して反らしてしまう
別人になってしまったかのような高鳴る鼓動
一生懸命抑えようとすればするほど意識して
余裕が無くなり空回りしてぎこちなくなって
完膚無きまでの不器用さに拍車が掛かっても
きっと喜んでもらえるとか思い込んで突っ走って
ありがた迷惑へとねじ曲がってしまわないように
些末なことで不興を買ってしまったり
まして忌諱に触れるようなことだけは
絶対に避けなければならないし
細心気を付けなければならない
他の誰でもなく俺が責任をもって
行動しなければならないのだから
大丈夫大丈夫
俺なら出来る
恐らく出来る
多分とは怯懦
声を出すことで成功のイメージを刷り込ませよう
初めての気持ちで最初から上手くは出来ないから
どんなに弱気な発言であっても自信満々に力強く
震える声を聞き逃さないよう心内に耳を近付ける
度胸が無く威勢を張っているだけだったとしても
思いっきりやってみないと失敗かどうかも不明で
自分自身で否定してしまえば萎縮してしまうから
全然全くもって大したものじゃないけれど
などと前置きして喜んだ顔を見たいが為に
会話を盗み聞きなんて無様な真似までして
振り向かせようとしているのだろうか
好みだというものを見付けては贈り物
立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花
コロコロ変わる表情は新しい本を読むように
まだ知りえない世界の示す片鱗に触れられる
然りとて俺が変わる為の材料ではない
新たな想いや感情を生み出し
満ち溢れる愛おしさに対して
全力で向き合っていきたいと
思えてしまう必要不可欠な人
積極的に掴み取れ無くても
消極的で後悔を残すのなら
エトセトラ割りきれずとも
パンジーに降り注ぐ春時雨
難解の怪なら何回でも解を
偏に明かし続けてみせよう