掌編小説集

544.因果律のLyricsMarblingHightide

誰にも話せないことがあった
けれど勇気を出して話してみた

辛かったね
苦しかったね
と抱きしめてくれた


付き合っているのに全く頼ってきてくれないから
俺って必要とされていないのか?って不安になっていたんだ

難なくこなしているようにみえて
実はとても努力という努力をしていて
そのせいで自分自身を追い詰めてしまう

肩の力の抜き方を知らなくて息抜きが上手にできないほど不器用なくせして
俺の負担にならないようにって健気さが伝わってくるからこそ
逆に俺の前だけでは甘えて欲しかったんだ

いくら俺が助けたいと思っていても
助けてって言ってくれないと助けられないんだ
この違いはとてつもなく大きいんだよ
俺に言ってくれて本当にありがとう


自分だけの価値観で理想通りに変わって欲しいなんて押しつけたりはしない
辛い時こそ受け入れて寄り添ってくれて安心を与えてくれる


特別な才能がある訳でも凄い特技を持つ訳でもない
どんな私を知っても好きな気持ちは揺るがないと言い切る物好きで
話を疑わず真摯に聞いてありのままを理解し認めてくれる


何も言わなかったのは
何も言えなかったのは
信用してなかったからじゃない
ただ心配かけたくなかったから


自分だけでどうにかしなきゃって思い上がっていた
逃げたという記憶が深く刻み込まれてしまうのが怖かった

気付けなかったことを気付かなかったことにしても
持っていたはずのものさえいつの間にか失くしてしまって
見えてくるようになって精神的な呪縛にどんどん変わって

ダニング=クルーガー効果で生み出された
ガスライティングのほとぼりが冷めることはない

後から目にしたものがそれまでのイメージと入れ替わり
偽物の真実として置き換わってしまう

いくら私が変えようとしても
私自身が受け入れようとしなければ
何も起こらなかったのかもしれない

世界が変わったかどうかは分からない
彼に変えてもらったのでもないけれど
私自らの意思で変わりたかったのは確か

彼が鍵がかかっているか否か確認さえしなかったのは
私自身が心の扉を開けなくては意味がないから


私を傷付けたトラウマな言葉達は
彼にかかれば私を癒す魔法となる


触れ合うあったかい体温に白雨は止めどなく降り
彼に愛されて大事にされていると感じる


静まりかえる空間にLose one's life.‐心を圧迫するような感覚‐はもう見当たらない

安らぎを覚える癒しの光景に囲まれて
ゆっくり歩む人生の豊かさを教えてくれるように

乗り越えた後にしか出ない美しい虹が
真打のイマジナリーフレンドを払拭し
けちな記憶を新たに上書きしてくれる

帰ってくる場所があると分かったから
恐れずに何処へでも行けると思えたよ
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