掌編小説集

558.子供の夢を壊すのではなく、大人になり認識した現実によって、子供の頃に抱いた夢を壊してしまう。

一人の違う人間であると認め尊重して欲しいと
子供は思い続け

世間に恥じないよう思い通りに動いて欲しいと
両親は思い続け


居ない片方の罵詈讒謗を延々聞かされ
本人達だけでやってくれればいいのに
子供の自分を味方につけようと必死で


一緒にいたくなかった
一人にして欲しいのに

板挟み状態の均衡を崩し
裏切るような酷い言葉を
言ってしまいそうだから


きっと私を殺したかった訳じゃない
どんな風になってしまうのか心配で

ただ美しい光景を見させてやろうという親心
子供の為を思ってしたことで悪気は全く無い

両親は何をしているのかと思えば
ご覧の通りに私の邪魔をしている


糊口を凌いだ憎しみが消えていくことが
怖いだなんて思っていたけれど良かった

全く以てそんな事態にはならなかったのだから
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